温暖化対策、ビジネスより、小さな一歩を

                      環境ジャーナリスト・川井直樹



 危機が迫らなければ、あるいは身近な問題でなければ、なかなか行動を起こすことは難しい。環境問題を考える時、
どうしても、そう思わざるを得ない。1997年の地球温暖化防止京都会議で、あれだけ盛り上がった温暖化対策も、
ここに来て、もはや打つ手がないようにも見える。二酸化炭素の排出量抑制は、あれから劇的に進んだだろうか、否である。

 我々人類は、持続的発展可能な社会を作るため、社会の発展を阻害することなしに、温暖化対策を進める”はず”であった。
しかし、、現実にはどうだろうか。石油をはじめとした化石エネルギーの消費量は伸び、それだけ二酸化炭素の排出量は増えた。
アメリカはブッシュ政権になり、手のひらを返したように京都議定書を批准しないことを早くから表明した。脱石油のはずが、
現在は原油高に世界経済が喘ぐ状況になっている。皮肉な結果といわざるを得ない。もっと皮肉なのは、京都議定書を批准しない
アメリカで、排出権取引が盛んなことだ。当初、欧州連合(EU)は、排出権をビジネスにすることには反対だった。

 しかし、日本もそうだが、排出権をビジネスにすることで、さらに温暖化対策が進むという目論見があったのは事実である。
排出権とは、発展途上国などが今後の経済成長を見込みながら、温暖化対策を講じることで二酸化炭素排出を抑えられた場合、
本来排出する権利のある二酸化炭素量と実際の排出量との差を「排出権」として売買できるという仕組みだ。植林により
二酸化炭素を固定化することで排出権を生み出す手もある。相手が気体で見えないだけに胡散臭いが、実際にそれをビジネスに
するということは、素人から見ればいかがわしい感じもするだろう。しかし、排出権ビジネスは、実際に存在するのである。
人間の知恵の産物だ。

 そんなことより、国内対策というのが常識だが、残念ながら劇的に変わってきたとは言えない。代替エネルギーは様々検討されて
いるが、コストなどの点で置換が進んでいないのが実情だ。省エネという点では、もっと個人や小さなコミュニティレベルで温暖化防止の
取り組みをする必要があるのではないか、というのが私の考えである。地域住民の知恵を出し合うことが、今、求められるのである。






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