選挙総括@ データの開示


[データを入手する]


 昨年、沖縄県知事選についてまで取材したうえで、極私的ながら総括したにもかかわらず、4月8日の統一地方選挙、
わけても堺市議選について何らの分析も試みないのは、いかにも片手落ち。そこでTriboundary-SAKAIなりの分析と総括を
しておこうと思う。もちろん、極私的であることに変わりはない。

 さて、分析を試みるにあたり、基礎的なデータが必要となったのだが、ここで1つの問題に直面した。しかも、今後についても
かかわりのあることなので、まず、その問題について指摘しておかなければならないと考える。

 問題とは、4月の統一地方選に関するデータの開示についてだ。投票数や開票状況、確定した得票数などのデータは当然、
堺市選挙管理委員会で公表されているものと考え、同委員会のホームページを開いてみた。しかし、そこにはデータは公開されて
いなかった。問い合わせてみると、必要とするデータを提供することは可能で、ファクシミリで送信してもいいし、直接、同委員会を
訪ねてコピーをもらうこともできるという。しかし、ホームページに公開する予定はないとのことだった。


[全政令市で堺市だけがHPで公開していない]


 私が同委員会に出向く旨を伝えると、コピーを用意しておいてくれるという。しかし、選挙に関するデータをホームページで
公開しているところは多いはず。そこで、市役所内の同委員会に出向く前に、試みに全国17の政令指定市の選挙管理委員会の
ホームページを開いてみた。

 結果をいうと、07年5月16日時点、つまり投票日から38日を経過した時点で、堺市を除く16の政令指定市全部がデータを
公開していた。静岡市と北九州市は補欠選挙が行われただけだったが、当然公開している。川崎市は5月1日に公表しており、
恐らく最も遅い公開だったと考えられるが、きちんとしたデータを示している。また、選挙直前の4月1日に政令指定市となった
新潟市、浜松市さえも公開している。堺市だけがホームページで公開していないのだ。

 もちろん、投票日の翌日、つまり4月9日付の新聞各紙は、各候補者の得票数なども詳細に報じているわけで、多くの市民に
とっては「それで十分」なのかもしれない。終わった選挙のデータが必要という人間は、そんなにいないだろう。しかし、
それでいいのだろうか? 少なくとも、選挙管理委員会の姿勢として、きっちりデータを示しておくという意志があってもいい
のではないだろうか?



[選挙管理委員会の目的とは?]


 総務省の調査では、インターネットの人口普及率は70%に達しており、多くの人が利用できる環境にある。インターネット上で
公開すればいいという単純な問題ではないが、容易にアクセスできるものである以上、重要なことは開示しておくべき
なのではないか。少なくとも、堺市を除く16都市はそう考えているからこそ、選挙管理委員会のホームページ上にデータを
公開しているわけだ。選挙管理委員会の目的は、選挙を円滑に運営することにもあるが、民主主義の基本である選挙制度
そのものを、住民により理解させるための情報発信を行い、多くの人に参加を促すことにあるはず。投票率が低下している中
にあって、選挙管理委員会だけは「選挙は重要だ」「民主主義の基本だ」と叫び続けなければならない存在であるはずだ。
日ごろの活動の結果を示すのが投票であり、そのデータは選挙管理委員会にとっては最大の成果物であるはずではないのか?

 堺市の選挙管理委員会を訪れると、事前にお願いしていたものは用意してくれていたし、他にも必要なデータがあるといえば、
その場でコピーをとってくれた。しかし、「堺市を除く全政令指定市がデータをホームページで公開している」ことは伝えた。
さらに、少々意地悪だが、「近々、堺市でも公開するんですよね?」と訊ねてみると、「そういう予定はない」との返事。

 予算の問題もあるだろうし(ホームページのアップデートにそれほどお金が必要とは思わないが)、さまざまな課題について
優先順位というものもあるだろう。しかし、選挙が自治の基本であり、自治体にとって、住民にとって最も大事にしなければ
ならない制度であるはずだ。政令指定市ではない一般市でも、開示しているところは多い。政令指定市・堺市の選挙管理委員会に、
そうした認識がないなら忌忌しき事態であり、市政の軽視でさえある。そんなことでは、経済や文化を含めた市の発展などと
いうことは、とてもおぼつかない。

 選挙の極私的分析は、稿を改めます。



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